中国人の人形
Boneka orang Cina(ボネカ・オラン・チナ

最初にバリ島に来た異邦人は中国人であったと言い伝えられ、次の様な伝説が残っている。

大昔、中国人の船団がサヌールの沖合いで難破し、海岸には累々とした死体と、辛うじて生き残った中国人達が打ち上げられた。瞬く間に遺体にたかる蟻の群れに恐れをなした王の一族を中心とした生存者達は海岸から数キロの内陸に逃げ延びる。

その中に世にも美しい姫がいて、土地の王家の王子がたちまち恋に落ち結婚を申し込むが、この王子を好きになれない姫は、王子に無理難題を押し付け、それを実現出来たら結婚すると約束する。

それは、貴方の顔は出っ歯で醜いから前歯を削って出直すこと。毎日寺に参拝したいから各家に寺を設置すること。中国の貨幣を流通させること。と言うものであった。

それから暫くして王子が再び姫の下を訪れると、彼は前歯を全て抜き、端正な顔の若者になっており、彼が言うには全バリ人の家の敷地内に寺を作ることにしたことと、更に中国の貨幣も使える様にしたことを告げた。この熱意に姫も感動し二人は結婚することになった。

これ以来、バリ島では、結婚前にポトンギギの儀式が行われる様になり、各家々には敷地内に寺が置かれ、中国貨幣も流通するようになったと言う。

但し現在では中国貨幣は、葬儀などの重要な儀式の時のみ使われ、しかも本物は既にないため中国貨幣を模して作られた鉄片がその名残りの様に使用されている。

中国人達が蟻の大群に恐れをなして避難した土地は、サヌールとデンパサールの境目に当る場所にあるが、今でもこの村の人々は一般的なバリ人と顔立ちが違い、ヒンズー教の宗教行事を行ってはいるが、中国的な要素を色濃く残した形のものとなっている。

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